[ 森日向子 ]突拍子もないことを言いますが、うちに住み着く女子大生喪女がノーブラでふらつくから乳首と目が合ってしょうがないんです

――崩れゆく境界――

森日向子 は文学部3年生。細身で華奢な体に、知的な雰囲気を漂わせる黒縁のメガネ。地味なわけではないが、派手でもない。だが、気づいた者だけが知る彼女の隠れた魅力があった。

ゼミの先輩・須藤涼にとって、アキは最初「目に入らない存在」だった。

けれど、ある日、たまたま二人きりになった教室での会話が、すべてを変えた。

◇

「森日向子 って、意外と……可愛いよな。」

涼がそんなことを言ったのは、ほんの軽い冗談だったのかもしれない。

けれど、その言葉を聞いた瞬間、森日向子 の心はざわめいた。

「そんなわけないでしょ。」

「いや、マジで。メガネ取ったら、結構ヤバいんじゃね？」

ふざけてそう言いながら、涼はアキのメガネをそっと外した。

「え……っ」

近すぎる距離。涼の手が頬をかすめ、視界がぼやける。

「やっぱり、ヤバいな。」

そのまま、涼の顔が近づいた。

何が起こっているのか理解する間もなく、唇が触れ合った。

柔らかく、けれど次第に激しさを増すキスに、森日向子 の頭は真っ白になった。

涼の手が 森日向子 の背中をなぞり、細い腰を抱き寄せる。

「ダメ……こんなの……。」

震える声で拒もうとしたが、体はまるで逆の答えを出しているようだった。

――罪悪感が溢れる。でも、止められない。――

なぜなら、涼にはすでに恋人がいたから。

◇

涼の彼女・麻衣は、ゼミでも一目置かれる存在。才色兼備でプライドが高く、彼氏である涼への独占欲は強い。

だから、森日向子は最初からわかっていた。自分が踏み込んではいけない領域に足を突っ込んでしまったことを。

それでも、涼との関係は加速した。

ゼミ室の隅、大学の図書館、人気のない講義棟の廊下。

どこであっても、二人は熱を求め合った。

「森日向子、やっぱりお前……俺のツボなんだよな。」

キスのたびに囁かれる甘い言葉。

罪悪感と背徳感に飲み込まれながらも、アキは涼を求める心を抑えられなかった。

◇

だが、そんな関係が長く続くはずがなかった。

それは、麻衣にバレたことから始まった。

「 森日向子 、ちょっといい？」