なつめ


なつめは講義が終わり、静かなキャンパスを一人歩いていた。秋風が木々を揺らし、落ち葉が舞い上がる。今日も先生との秘密の時間が待っていることに、彼女は胸の奥がざわつくのを感じていた。

「先生、もうすぐ会えるね…」なつめは小さくつぶやきながら、スマホを手に取る。そこには、先生からのメッセージが届いていた。

「今日、学校が終わったら研究室に来てくれるか?君に話したいことがあるんだ。」

ドキリと胸が高鳴る。最近、なつめと先生との距離は少しずつ縮まっていた。最初は授業の質問で始まった会話も、次第にプライベートな話題に移り変わり、今では彼女は先生の研究室で何度も二人きりの時間を過ごしている。

夕方、なつめはゆっくりと研究室のドアをノックした。少し震える手。ドアが開くと、いつもの優しい笑顔で先生が迎えてくれた。「お疲れ様。さ、入って。」と彼は軽く手を振った。

なつめは静かに部屋に入り、先生の机の前に座った。教室で見る姿とは少し違う、リラックスした雰囲気が漂う先生の表情に、なつめはますます惹かれていくのを感じた。

「今日は…どうしても君と話したいことがあって。」先生の声が少し低くなり、真剣な眼差しがなつめを射抜いた。彼女はその言葉に心臓が跳ね上がった。今までお互いに言葉にしてこなかった感情が、今ここで何か変わる予感がした。

「なつめ、君がいつもここに来てくれることが嬉しい。でも、これ以上、僕たちは…」

先生が言葉を詰まらせたその瞬間、なつめは自分の気持ちに気づいた。「先生、私は…あなたが好きです。」思わず口に出してしまった。その告白に、部屋の中が一瞬、静寂に包まれた。

先生は驚いたように彼女を見つめたが、次の瞬間、彼は静かに立ち上がり、なつめの前に膝をついて座った。「なつめ…僕も、同じ気持ちだ。」

その言葉に、なつめは涙が込み上げてきた。ずっと胸の中に秘めていた思いがようやく解放され、彼女は先生の手をそっと握った。先生は優しく彼女の頬に手を添え、ゆっくりと彼女の顔を近づけた。

「でも、僕たちの関係は秘密にしなければならない。君もわかっているだろう?」

なつめは黙って頷いた。彼女には、先生が何を言おうとしているのかが理解できた。この関係が世間に知られたら、彼も自分も傷つく。だが、それでも、この瞬間を手放すことはできなかった。

二人は、静かに唇を重ねた。彼の温もりが彼女の心に深く染み込んでいく。

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